廊下には、ずるずるとしたローブの男、甲冑を身につけたダークブラウンの髪の騎士、拳法着を装備した体操選手のような引き締まった身体の男、そして飾り気のない黒いワンピースを着た少女、という一種異様な一団が集まっていた。
「……随分悪意を感じる選択肢だったような気がするが、文面を考えたのは卿か?一人では何もできぬ魔道士殿」
「何の話か理解しかねるな、騎士ロイエンタール殿。卿を選んだのは私ではなく、こちらの猫だ」
「え?わたし?わたしのせいになってんの!?そんな馬鹿な!」
「そう最初から喧嘩を売るな、ロイエンタール。話が進まん。それに卿はまだましだ。俺なんて卿のおまけ扱いだぞ」
魔道士を冷たい目で睨みつける騎士ロイエンタールと、それを一瞥もしないオーベルシュタイン、間に挟まれて泡を食っているに、ミッターマイヤーが場を和ませようと明るく割って入った。
「そんな!おまけだなんて!わたしじゃないですからね!わたしが文面を選ぶなら、ミッターマイヤー様がメインで、こっちの男のほうがおまけです!」
「……お前も大概な小娘だな」
「ギャー!頭を掴むなっ!」
「ははは、。そんなに照れ隠しなんてしなくていいんだぞ」
「でっかい勘違いです!」
「ロイエンタールと俺を比べて、君がロイエンタールを優先するのは当然じゃないか。そうそう、それから俺の職業は武闘僧だ。回復と直接攻撃を担当する」
「わたしの話聞いてました!?」
「卿はいい加減に自分の勘違いに気づけ!」
「判った判った。二人とも照れ屋だからな。俺が悪かった。それでオーベルシュタイン。これからどうするんだ?」
左右から詰め寄ってくる親友と少女を軽く宥めて、ミッターマイヤーは一人離れたところで話が終わるのを待っていたオーベルシュタインを振り返った。
城の廊下の窓から街を眺めていたオーベルシュタインは振り返って、笑顔のミッターマイヤーと、その後ろで壁と床に、それぞれ両手をついて怒りなのか無力感なのか、とにかく何かに耐えている騎士と猫を等分に見て軽い溜息をついた。
「すぐにでも皇女殿下の救出へ向かうか、あるいはまず街で情報を集めるか、だろう」
「今すぐ姫さまのところへ!」
「つくづく馬鹿な小娘だ。情報収集はすべての基本だろう」
とロイエンタールの意見が対立した。


1.今すぐ街を出る。

2.情報集の基本、街の酒場に寄ってみる




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