「……猫かい」
部屋を出たとたん、は低い声で呟いた。
「さて、では肉弾戦を担当する人員を選ぶ必要があるな」
オーベルシュタインはまるで聞こえていないかのように先へと歩いていく。
はむっと眉を寄せながら、意外に足の早い男の背中を走って追いかける。
「こういう話の場合、わたしが囚われのお姫様とかやるんじゃないの!?もしくは救出メンバーのリーダーとか!」
オーベルシュタインは肩越しに振り返っただけで、またすぐに前を向いた。
「一つ、囚われの身では出番がほとんど存在しない。二つ、そもそもフロイラインに囚われの心優しい皇女という役はあまりにも不釣合いである。三つ、あなたに命を預けるような自殺願望を私は持ち合わせていない」
「最初の一つ以外、めちゃくちゃな言われようなんですけど!?」
怒鳴りながら後ろをついてくるを僅かに顧みて、オーベルシュタインは声に出さずに溜息をついた。
今の姿を鏡で見せても、恐らく彼女は認めないだろう。足取り荒く声を荒げて噛み付いてくるその様が、毛を逆立て背を丸めて威嚇する猫そっくりだなんて。
「気に食わぬというなら、降りるか?」
そう訊ねられると、は唇を尖らせて黙り込む。
だが少しもしないうちに、怒りを納めて後ろに回した両手の指先を組んで、床を蹴る仕草をした。
「姉さ……姫様を助けるためだから、協力してあげる」
「結構。では人員選びだ。ここはフロイラインの勘に任せる場面らしい。候補は二人だ。
どちらを選ぶか?」



1.今にも姉を救いに飛び出そうとしている弟皇子ラインハルト

2.女好きと名を馳せているが、実は女嫌いであまりやる気のない騎士ロイエンタール




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