ヨザックのタイミングの悪い余計な差し入れからを離しておこうと、ユーリの部屋から抱き上げたまま連れ出した。
俺が睨み付けると、その余計な物を持ってきた張本人は誤魔化すようにスキップでさっさと姿を消して、俺と俺が抱き上げているが廊下に残った。
しばらく俺の腕の中で黙っていたは、両手の指先を合わせて指遊びしながら、おずおずと俺を見上げる。
「えっとね、あのね……」
「なに?」
そういえば、黙ったまま連れ出したのだからが疑問に思っているかもしれないと、何を聞かれても上手く誤魔化して返そうと心の準備をしながら聞き返す。
だが、は俺より一枚上手だった。
「あの……コンラッドも、ああいう本持ってるの……?」
思わず足を止めてしまった。
はまじまじと見下ろす俺の視線が耐えられないように、重ねた指を捏ねて遊びながらそれをじっと見ている。
どうりで黙って連れ出されたわけだ。見えていなかったようで、しっかり落ちた本を見ていたらしい。
そうか、一昨日部屋の前でユーリとした話を全部聞いていたわけじゃないのか。
「さて……どうだろう?」
誤魔化すように首を傾げると、は傷付いたようにぎゅっと眉を寄せて俺を見たけど、何も言わずに俯いた。しまった、からかいすぎた。
「ごめん、冗談だ。俺は一切持ってないよ」
「ほ……本当に?」
ユーリの元から逃げ出したときは、すぐ側のの部屋に行くつもりだったけれど、そのまま部屋の前を通り過ぎて、は驚いたように振り返る。
「え、あの、コンラッド?」
「このまま俺の部屋まで行こう。どこにも隠してないことを探してくれていいから」
「ええ!?あの、でもそんな探すって……あの、お、降ろして!」
部屋を家捜しするのと、このまま俺の部屋まで抱き上げられて運ばれるのと、どちらを止めたいのか混乱するに笑いながら、そのこめかみにキスをする。
「俺はそういうものに頼らなくても、可愛くてたまらない婚約者がいるから」
は唇が触れたこめかみを手で押さえて真っ赤になりながら俯いた。
「でも……わたし、ずっと傍にいるわけじゃないもん……」
「陛下にも言ったけどね、俺は陛下みたいに若くはないから、多少はそういう気分になっても、何もしなくても鎮めることも可能だよ」
が少しだけ疑いを含んだ目を向けてくる。我が身の信用のなさを嘆くべきか、たかが本にでも嫉妬する婚約者の愛らしさを愛でるべきか。
「それに、どうしても我慢できなくなったときは」
が俺の上着を握り締めて不安そうな顔をする。
傍にいる間に、そんな愛らしい表情や様子をたくさんみせてくれるから、俺には他の女性の存在は不要なんだよ、
笑いを噛み殺して、抱き上げたの耳に口を寄せ、そっと囁く。
との夜を思い出してするんだよ。俺には君しかいない。君しかいらない」
は顔を真っ赤に染めて、廊下での卑猥な発言を注意すべきか、俺がそれらに興味がないことを喜ぶべきか、複雑な表情で黙り込んで、結局握り締めていた俺の上着に顔を埋めると、小さく消え入りそうな声で呟いた。
「嬉しい……かも」
困ったな……そんな可愛いことをされたら、今夜も眠らせてあげられないかもしれない。





いい加減にしなさい(ビシッ)
思わず裏手でツッコミたくなる二人とは対照的に、有利は今頃婚約者
に締め上げられています(可哀想)
地球ではコンラッドの蔵書を気にしていなかったというより、自分のこと
でいっぱいいっぱいで、気にする余裕がなかっただけのもよう。


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