「え、調子悪いの?」 いつもよりゆっくりめに朝起きたらコンラッドにそう教えられて驚いた。 「ええ、今日は無理をしないほうがいいだろうと、部屋で寝ておくそうですよ」 だけどコンラッドの表情は暗くないし、むしろすっきりとしているくらいだったから、そんなに心配するほどではないんだろう。 それにこの様子だと、どうやらちゃんと仲直りできたようだ。 よかった。昨日の話はさすがのおれもコンラッドに深く同情したからなあ。 コンラッドの様子からいって、調子が悪いって寝不足とかその辺りかもしれない。 きっと一晩コンラッドに謝る言葉とかを考え込みすぎて、気持ちが悪くなったんだろう。 はときどきそういうところがあるから。 「……の体調が悪いのか?」 いつも寝坊のヴォルフラムがおれの後ろでのそりと起き上がった。 熱に溺れる(エピローグ) 「珍しいなヴォルフ、おはよう」 「の体調が悪いのかと聞いている」 寝起きのせいか、質問の答えが返ってこなかったせいか、それともが心配なせいか、ヴォルフラムは不機嫌にコンラッドを睨み付けた。 「落ち着けよ。マジで調子が悪かったらコンラッドがこんなに落ち着いてるわけないだろ。ちょっと不調なくらいだってさ」 「……そうか」 途端に心配が失せたのか、ヴォルフラムは欠伸を噛み殺しながら大きく伸びをした。 「では見舞いにでも行っておくか」 「それは昼過ぎにした方がいい。はさっき眠ったところだから」 ヴォルフラムがベッドから足を下ろすとコンラッドがそうたしなめた。やっぱり寝不足か。 こんなことなら昨日は気を紛らわせるためにおれが一緒に寝とけばよかったな。 「……ちゃんと仲直りできたんだな?」 おれが喧嘩のことを知っていると、から聞いていないかもしれないとは思ったけど、そう確認すると、コンラッドは苦笑して頷いた。ああ、聞いたのか。 ………だとしたら、の兄貴として言っておかなければならないことがある。 「コンラッド、ちょっとここに座れ」 おれが胡坐をかいてベッドの上を指し示すと、なぜかヴォルフラムが怒り出した。 「ユーリ!このベッドはぼくとのものだろう!他の男をあげようとはどういう魂胆だ!」 「こ、魂胆も何も、ちょっと説教しとこうと思っただけじゃん!」 その前に、このベッドはおれのものであってヴォルフと折半するもんでもないだろうに。 「説教?」 兄弟で同時に鸚鵡返しして、だけどコンラッドはすぐにわかったようだ。 ヴォルフラムが眉を吊り上げるから、このままで拝聴しますと苦笑する。 おれは威厳を上げようと、ごほんとひとつ咳払い。 寝巻きで威厳もなにもないけどな。 「いいか、コンラッド。今回は確かにから誘ったとはいえ、あいつはまだまだ子供なんだから、そういうのをたしなめるのはあんたの役目だろ?」 「ですが陛下、俺とは婚約者同士ですからそこまで目くじら立てなくても」 「陛下って言うな名付け親!しかもおれは今、の兄貴として話してんの!婚約者っていうのはあくまで婚約者で、夫婦じゃないんだからな!」 あれ、誰か前にそんなこと叫んでなかったっけ? ………そうだ、おれのベッドに毎晩入り込んでくるヴォルフラムにギュンターが怒るのと同じ言葉だ。 コンラッドとのバカップルと、ヴォルフとおれが同レベルの文句をつけられるというのはかなり納得できないものがある。 おれが溜め息をついていると、後ろでヴォルフラムがとんでもないことを言い出した。 「なんだ、め。焦るなと言っておいたのにコンラートを誘ったのか」 「なに!?ヴォルフ知ってたの!?」 おれが振り返るとヴォルフラムは、バツの悪そうな顔をして眉を寄せた。 「知っていたというか……。まあ、それにしてもそれなら調子が悪いはずだな」 「は、なんで?」 一緒に風呂に入ってなんで調子が悪くなるわけ? このときおれはヴォルフラムを振り返っていたから、後ろでコンラッドがどんな顔をしたのかは見ていない。 「ヴォルフ!」 「は処女だったんだろう?負担があって当然だ」 ふたりの声はまた重なった。 言葉は全然違うけど。 っていうか、それどころじゃなくて! 「あ、あのなあ!なんかでっかい誤解がないか!?誘ったって一緒に風呂に入っただけだよ!しかも水着着用!!なんでしょ、しょしょしょ、処女とか関係あるわけ!?」 カッコ悪くどもってしまった。さらっと流して言った方が遥かに恥ずかしくない。 「なんだ、それだけなのか?」 「当たり前だろ!?はまだ子供なんだから、そんな大人な関係まだまだ早いよ!そこんとこはいくらコンラッドだってけじめつけてるよ!な、コンラッド!そうだろ!?」 勢い込んで振り返ったら、コンラッドは笑顔全開で頷いた。 「もちろんです陛下」 「だから陛下って言うなって。ほらあ、コンラッドはこんなに信用できるやつなんだから、おれの大事なに婚前から手を出すわけないだろー」 「コンラートが禁欲的なんて話、ぼくは聞いたことないぞ」 「コンラッドがおれの信頼を裏切るはずないの!」 同意を求めようと振り返ったら、コンラッドは窓の外を見ていて、朝日がまぶしいですねなんてよくわからないコメントをした。 |
ここまでお付き合いいただきありがとうざいました。そしてお疲れ様です! 妙に長い話になりましたがようやく熱に溺れる終了です。 えー……コンラッド……最後までなんというかあれな発言が……。 本当にやつは恋人を大切にしているのだろうかといぶかしんでいたり(^^;) とりあえず今回の反省点は一人称ではじめたことかと。 肝心のシーンが艶っぽくならん……!と一回目の次男のお楽しみタイムで 気付いてひとり苦悩。色んな意味で楽しんでいるのは次男ひとりでした(笑) じゃあ三人称ならエロくできたのかと問われると、最後の次男のように目を 逸らすしかなんですけれども(笑) リアルタイムで更新を見ていた方はご存知かと思いますが、10話には隠し リンクがあります。内容はまったく同じ場面の次男視点です。 リンクはTabボタンには反応しませんが、反転すれば一発でわかります。 よろしければご覧下さいv ……ってお疲れ様ですって言った後に……(^^;) |