「……、最近妙にお菓子をよく作るよな」
ジンジャークッキーを摘みながら有利がそう零した。
「えー、あー、うん、まあ」
週に二回は作っていると思う。
それでもって、それをしばらく持ち歩いて、そろそろ駄目になるなーと思うと食べてしまう。
食べるとまた日持ちのするお菓子を作って持ち歩く。
「あのねー、コンラッドがわたしの作ったお菓子食べたいんだって」
「……あっちで作ればいいじゃん」
有利が呆れたように呟いた。
「作っては食べ作っては食べ、おまけに防水加工した鞄を持ち歩くのも面倒だろ」
「食べたくないなら食べなくていいよ」
「誰もそんなこと言ってない!」
今作っているのはドライフルーツケーキ。生地を型に流し込んで蒸し器にかけると有利の前に移動した。
「あっちで作った手作りお菓子は、グウェンダルさんとヨザックさんとアニシナさんが先に食べたって拗ねてたの。だから、日本で作った手作りお菓子を眞魔国に持ち込んだら、それはコンラッドに一番に食べてもらうの」
日本で作って日本で食べた人ならたくさんいるけど、日本で作って眞魔国へ持ち込むのはこれが最初ということで。どう聞いても詭弁だけど、一番と名前をつけてればコンラッドもちょっとは気が晴れてくれないだろうかと思って。作りたてのものはまた別に、あちらで作って食べてもらえばいい。
「……………………ああそう」
有利がジンジャークッキーを口に放り込んでテーブルに倒れ伏すと、キッチンにお兄ちゃんが入ってきた。
「お、ちゃんのお菓子か。最近よく作ってくれるよな」
そう言って、三日前に焼いたクッキーを嬉しそうに摘んだ。
「おすそわけだけどなー」
有利がクッキーを噛み砕きながらぼそりと呟くと、お兄ちゃんが眉を吊り上げる。
「なにを言う!ちゃんはゆーちゃんのためだけに作ってるんじゃないぞ!」
「うん、おれのために作ってるんじゃないなー……確かに」
そう呟いて、テーブルに伏せたまま深い溜息をついた。








おまけのおまけです。お菓子についてはこんな決着。恐らく次男はこれで満足するでしょう。
だって、お菓子を作るたびに日本でも自分のことを考えてくれているわけですから……(^^;)


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