前回、せっかくから俺にキスをしてくれたのに、ユーリがノックもなしに部屋に入ってきたせいでが隣の部屋に逃げ出して、そのままチキュウに戻ってしまった。 一人残された俺はユーリから懇々と説教を受けたわけだが、あれから数週間。 戻ってきたはちょっと機嫌が悪かった。 もあちらでユーリに説教されたのかと思ったら、怒っていたのはそのせいではなかった。 夜になり、二人きりになってからは向かい側のソファーから恨めしげな目で俺を睨みつけてくる。 「前に……キスマークなんてつけるから、お兄ちゃんに見られた……」 「え、陛下に?」 「有利じゃなくて!お兄ちゃん!勝利お兄ちゃんのほう!」 どうにか誤魔化したけど、とは怒ったように唇を尖らせる。 ユーリに見られていたら大変な誤解を受けるところだった。あれはあちらに戻っても俺のことを思い出せるようにとつけたものであって、ユーリに叱られるようなやましい跡ではなかったのに。 「鏡を見たらすぐに気付くだろうと思っていたから。服次第でそんなに目立つ場所じゃなかっただろう?」 「だって帰ってすぐだったんだもん!用意してた服は襟元が開いてたの!有利じゃなかったからまだよかったけど……は、恥ずかしかったんだから!」 「それは申し訳ないことを」 頬を赤く染めて睨みつけてくるけれど、どうやら本気で怒っているわけではないようだ。 俺の様子から、本気で怒っていないことが伝わっていると判ったのか、ますます赤くなって、スカートを握り締めてソファーから立ち上がる。 そのまま寝室に立て篭もってしまうのかと引き留めようと腰を浮かせたら、テーブルを回り込んだは寝室へ向かわず俺の前に立って、両手で肩を押してソファーに座らせてくる。 「?」 「そのまま」 怒ったような表情で俺の襟の釦を外して襟元を広げると、いきなり首筋に噛み付いてきた。 「つっ……!」 ビリッと痺れるような痛みが走ったそこをの舌が舐めて、更に強く吸われる。 手の甲で口を拭いながら顔を上げたは、満足しているのかと思ったらやっぱり真っ赤な顔をしたままで、照れて怒ったような口調で言い切った。 「仕返し!」 やるだけやって、言うだけ言うと、今度こそ寝室に脱兎のごとく逃げてしまった。 仕返しというわりに、のほうが照れているのはどうなんだろう。 あまりにも可愛らしい仕返しに、込み上げる笑いを噛み殺しながらドア越しに寝室に向かって就寝の挨拶をする。もう今日は恥ずかしがって顔を見せてくれないに違いない。 思ったとおり、おやすみの返答はドア越しだった。 自室へ戻る途中、ちょうど血盟城に戻って来ていたヨザックと行き会った。 「よう、もう姫はお休みか。うちのボスから聞いたけど、お戻りなんだろう?」 「ああ。今日のところはもう顔を見せてくれそうになくてね」 「また何かしたのかよ」 「今日は俺じゃなくて、の悪戯だ」 自分でしたことが恥ずかしかったらしいと笑うと、首を傾げた友人は、俺がわざと開けたままだった襟元に気がついた。 せっかくがくれた所有の証を、俺が隠すはずがない。 「……まああぁ、お盛んでよろしいこと。マーキングにキスだけじゃなくて歯形までって。意外と姫って情熱的ぃー」 「そう意外でもないけどな」 そう独りごちると、ヨザックは呆れたようにはいはいと手を振って聞き流す。 明日になって、俺が隠そうともしないことを知ったときのの反応が楽しみだった。 |
「恋人宣言」 配布元:自主的課題 第11回拍手お礼の品です。 仕返しになってなーい(笑) ちなみに有利は今回、まだ眞魔国に来てません。 (だからこそ次男がこんな真似できるのです) まるマ長編番外編へ お題部屋へ |