「一体どうしてこんな体勢に?」
「いや、だってが寂しいことを言うから」
ソファーに座ったコンラッドに、後ろから抱えるようにして抱き締められてその膝の上に座っているというおかしな体勢に呆れた声で呟いたら、まるで当たり前のように返された。
「寂しいことって、そろそろ日本に戻る頃合かなーって言っただけじゃない!」
「ほら、寂しいことじゃないか。それともは俺と離れても寂しくない?」
「そ……うは、言って、ない……けど」
ここで「別に寂しくない」と言えればいいのに、正直なこの身が恨めしい。
だって。
恐いもの見たさというか、ついそっと後ろを振り返ってみると、満面の笑顔のコンラッドと目が合った。
「じゃあ離れていても少しでも寂しくないように」
コンラッドが腰を屈めて近付いてきて、わたしは身を縮めるようにして距離を開けようとするけど、抱きかかえられている状態では限界がある。
ちゅっと音を立てて髪に落とされたキスが、今度は耳に落とされる。
「や……くすぐったいっ」
「それはが逃げるからだよ」
そんなことを言う合間にもキスが降ってくる。
「わたしが悪いの!?」
くすぐったいと身を竦めていたらコンラッドの手が滑るように顎の下へ入ってきて、大きな掌で首を伸ばすようになぞられる。
「ん……」
うなじの斜め下、肩と首の境界線辺りに強く吸うようにキスをされて、思わずお腹の上にあったコンラッドの手を握ってしまう。
「やだ……」
我ながら嫌がってるようには全然聞こえないような小さな声しか出なくて、コンラッドは笑いながらキスした辺りを舌で舐めてくる。
「や……ダ、ダメだってば……」
「何がダメ?」
首をなぞって滑る指先に、顎を軽く上げるように掬われて、頬にもキスが降ってくる。
耳元で呟くように囁かれた声に背中がぞくぞくして、震えながらコンラッドから身体を離す。
「そんなにキスばっかりダメ!それに、耳元で囁くのも禁止っ」
「禁止と言われてもな……」
真っ赤になってるのは判ってるんだけど振り返って睨み付けると、コンラッドは考えるように首を傾げる。
の形のいい耳を見ていると、つい愛を囁きたくなるから」
「どんな理屈よっ」
今度は息まで吹きかけるようにして囁かれて、泣きそうになりながら耳を押さえる。
「そうだな、俺が囁けないようにする方法はあるけど……それならキスも防げるよ」
「ど、どんな?」
罠だ、きっと罠だと判っているのについ聞き返してしまうのも、恐いもの見たさの心理が働いた結果に違いない。きっとそうだ。
コンラッドは笑顔で、自分の唇を指差した。
がキスでここを塞いでくれたら、あちこちにキスできないし、もう耳元でも囁けないな」
「それは解決方法じゃない!」


なんて叫びながら、実行しちゃうところがきっとコンラッドの思うツボなんだと判ってるんだけど……嫌じゃないわたしが一番ダメなのかもしれない。






「キスの雨を降らせよう」
配布元:自主的課題


第11回拍手お礼の品です。
似たもの恋人なんだから、もういいじゃないか
という気がしてなりません。
でも恥ずかしいのね……(^^;)


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