有利とわたしと村田くんとお兄ちゃんという、世にも奇妙なメンバーでプールに来た。
大人気なく村田くんを威嚇するお兄ちゃんの姿が何度か確認されたけど、それ以外は特に大きな問題もなく帰りの時間となって。
さっきまでプールに浸かっていたのに平気で、まさか更衣室のシャワーでスタツアが起こるなんて誰が予想するでしょう。
目が覚めたら恐い顔のコンラッドがいることだって、予想できませんでした。



「あ、あれコンラッド?」
目を覚ますとコンラッドに運ばれているところだった。
何か動きにくいと思えば、コンラッドの上着に完全にくるまれている。
いつものおかえりの笑顔がなくて戸惑いながら周りを見回すけど、見慣れた風景は血盟城のもので、特に緊張する理由も思い当たらない。
「あの、コンラッド?」
やっぱり返事もない。それどころか視線も向けてくれない。
競歩みたいなスピードで歩いているのに足音がしないという状況が恐くて、降ろして欲しいと暴れる気にもならない。
戸惑っているうちに部屋まで運び込まれて、ベッドに放り出された。
「わっ、と……」
ベッドが軋んで、コンラッドが上に乗り上げてくる。
え、ちょ、ちょ、ちょっと!?
「ま、まままま、待って!?何がなんだか、わたし全然……っ」
「さっき」
コンラッドを押し返そうともがいても、くるまれた上着が邪魔で手が出ない。
そうこうするうちにコンラッドの手が剥き出しの足を撫でてくる。
「ココココンラッド!」
「さっき……は猊下と一緒に、こちらに来たんだよ。心当たりは?」
「へ……?」
きょとんとして見上げたけど、コンラッドは目を合わせるのを拒むように覆い被さってくる。
「コンラッドォ!?」
「こんな姿で……こんな風に猊下と折り重なるようにして……」
「折り重なる!?」
どうやら村田くんも同時にスタツアしたようだけど、それにしたって場所はちょっと離れていたのに、なんだって折り重なり……?
「ゆ、有利は!?有利も一緒にプールに遊びに行ってたの!」
「………陛下も、一緒にいらしたけど……猊下の前でこんな格好をして」
「もーっ!!どうしてお兄ちゃんもコンラッドも、村田くんをそんなに意識するのよ!」
「例え猊下がいらっしゃらなくても、俺が傍にいないときに他の男の前でこんな姿を見せるなんてだめだ」
足をなぞるように撫でていた手がそのままコンラッドの上着にくるまれた中まで滑り込んできて、肌の上を直接さする。
「ビ、ビキニに怒ってる!?あの、でもこれ、水に入るとき以外はワンピースを上から着るタイプなの!」
肌を這っていたコンラッドの手が止まった。
首筋に埋めていた顔を上げて、ようやく目を合わせてくれる。
「本当に?でも、そんなの着てなかった」
「だって更衣室に戻ってシャワーを浴びてるときに呼ばれたんだもん。ちょうどワンピースは脱いだところだったの」
「……じゃあ、水際ではこんなに他の男に肌を晒したりしてないね?」
「う、うん」
コンラッドの手が太腿を撫でていて、目が泳ぎそうになる。ワンピースといっても、下の水着がギリギリ見えないくらいのミニだから、今コンラッドが撫でている辺りは見えてるんだけど……せっかく現物がないんだから黙っていよう。
ようやく納得したのか、コンラッドが起き上がってわたしのことも抱き起こしてくれる。
ただし、そのまま強く抱き締められたけど。
「コンラッド……あの、すごく今更だけど、濡れるよ……?」
本当に今更のことで、わたしをくるんでいた上着も、ベッドのシーツもぐっしょりと濡れて交換しなくてはならないことは確実だった。
「……あちらでは、俺は一緒に居られない。その分はに気をつけてもらなくてはいけないのに、こんな格好で男を挑発しちゃ駄目だ」
「そ、そんなつもりはこれっぽっちもないんだけど……」
「判ってる。そのつもりがなくても、そう見えるのが駄目だって言ってるんだ」
ヒルドヤードの温泉では、他の湯治客が居る中でスクール水着だったけど。あれはよくてこれはだめ、というのは果たしてビキニ水着が駄目なのか、コンラッドが傍にいないという状況で水着になるのが駄目なのかどっちだろう?
聞いたら「どっちも」という答えが返ってきそう……。
「き、気をつけマス」
「判ってくれたらいいんだ」
コンラッドはやっと微笑んで、そっと優しいキスをくれる。
「おかえり、
「……ただいま、コンラッド」





「不貞腐れて、目も合わせない」
配布元:capriccio

第9回拍手お礼の品です。
狭い、心が狭いよ、次男!(^^;)
スタツア到着シーンは省かれましたが、折り重なるようにということで
かなり密着した状態だったんだろう……と思います。
眞魔国を知っている人にも知らない人にも警戒される大賢者でした。

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