はらはらと雪が静かに舞い落ちて。
夜の闇に白い雪が舞い落ちる。
黒と白だけのモノトーンの世界。



ぼうっと窓辺にたって、ガラス越しに夜の闇に舞い落ちる雪を眺めていた。
、風邪を引くよ。こっちにおいで」
暖炉の側のソファーからコンラッドが手招いているのが窓ガラスに映って見えたけど、意味もなく雪を見ていたくてその場を動かなかった。

ガラスの中のコンラッドが立ち上がり、こちらへ近付いてくる。
それでも窓に手を当てて、ずっと雪を見ていたら後ろから抱きすくめられた。
「何か見えるのかい?」
「雪」
簡潔に答えて、コンラッドの腕の中にすっぽりと抱き締められるままに背中を預けた。
「窓辺は寒いだろう?ほら、ガラスに触れていたからこんなに手が冷えて」
コンラッドはわたしの手を取って、冷えた甲に口付けをする。
「手も唇も、冷たくない?」
「少しね。でもこうして、俺の指が、唇が、触れているところから少しずつ温かくなってくる。と俺の体温が混ざり合ってるんだ」
「……ちょっと恥ずかしいよ、そのセリフ」
コンラッドの胸にもたれかかって顎を上げて真上を見上げると、コンラッドはにっこりと嬉しそうに微笑んだ。
「やっと俺を見てくれた」
「なに、それ?」
「雪ばかり見ているから。話し掛けたらちゃんと俺を見てくれないと」
「見てたよ。ガラス越しだけど」
コンラッドは小さく笑って、口付けていたわたしの手を握り締めた。
「駄目だよ。その闇色の瞳を、俺がじっくり見たいんだから。ガラス越しだともったいない」
「なに、それ?」
くすくすと笑うわたしの声と、暖炉の火が爆ぜる音と。
コンラッドの指がわたしの凍えた指を絡めながら熱を分けてくれて。
「雪の何がそんなに面白い?」
「よくわかんないけど。単に見たかっただけかな」
「じゃあここからは俺を見て」
コンラッドはわたしを抱き上げて、無理やり暖炉の側のソファーの方に移動した。
もう雪を見るのにも満足していたから大人しく運ばれて、ソファーに座ったコンラッドの膝の上からそのまま抱きついた。
「ああ、やっぱり少しだけ冷えてる。室内だからって甘くみてたら風邪を引くよ」
「平気」
「駄目だ。が風邪を引いて苦しむところは見たくないよ。……だから」
コンラッドはそのままわたしを包むようにぎゅっと抱き締めた。
「寒い夜は、必ず俺の側にいて」



雪が降る。
雪は、どこにでも平等に、その白い結晶を、積もらせる。
眞魔国にでも。
大シマロンにでも。
窓の外の闇と、降り積もる真っ白な雪と。
白と黒の世界。
それはどこでも同じなのに。
側にいないのは、わたしではなく、あなたの方だ。
銀の光彩の散ったその瞳を向けてくれないのは、あなたの方だ。









自主的課題
「モノトーンの世界」
配布元



第7回拍手お礼の品です。
大シマロンの夜ということで、ちょっと重いですね…。
競技場でか、それともその後のパーティー会場かどちらかで。



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