相変わらず上達しない、罵倒されまくりのヴォルフラム先生の魔術講座が終わり、傷心を癒す散歩に出かけて発見しました。
居眠りしているコンラッドを。



庭園のベンチで腕を組んで座っているコンラッドを遠目に見つけて、喜んで駆けて行ったら途中で変なことに気がついた。
コンラッドがわたしに気付かない。
もしやと思って残りの距離を忍び足で近付くと、やっぱり眠っている。
これ、絶対たぬき寝入りだよね。コンラッドが正面に立つ人の気配に気付かないはずない。
そうは思うものの、もしも本当に眠っていたら貴重なものを見ているんだと思うと、動けない。
眠っていたら、いつもよりちょっとだけ表情が幼いんだ、とか。
うわー、まつげ長いなー、とか。
バックで咲き誇る花が似合う男の人ってどうなの?とか。
取りとめもないことを考えて、でも動けない。
あ、どうしよう。
キスしたくなってきた。
でも本当に眠っていたらいいけど、たぬき寝入りだったら恥ずかしすぎる。
いえいえ、本当に眠っていても、起こしちゃうからダメだ。
じゃあこのまま退散?
せっかくコンラッドの貴重な寝顔が見れたのに?
コンラッドが起きるのを待っていようか。
でも、正面に立つだけならまだしも、隣になんて座ったらやっぱりさすがに起こすよね。
これ以上近づくこともできず、かといって離れることもできず、その場で悩みながら、いっそたぬき寝入りだったらそろそろなにかアクションを起こしてくれるのに、とか考えて、でも本当の寝顔が見たいよね、と否定して……エンドレス。



「……?」
……どうやらコンラッドは本当に眠っていたようで。
わたしは、一時間くらい動けずにずっとそこに突っ立っていた。
「お、おはよう……」
自分の間抜けさに引き攣りながら、目を覚ましたコンラッドに軽く手を上げて挨拶をする。
「ちょっと休憩のつもりだったのに、本当に眠ったのか」
コンラッドはコンラッドで、自分の行動に少し驚いていた。
それにしてもコンラッド、寝起きがいいね。どうせなら寝惚けた姿も見たかった。
「ご、ごめんね。起こしちゃったみたい」
今ここに来ましたという風を装って言うと、コンラッドはなんの疑問も無く微笑んだ。
「いいよ。俺も眠るつもりはなかったし、起きて一番にの顔を見られるなんて、気分がいいしね」
寝起きでもキザなセリフが健在のコンラッドは、笑顔で両手を広げる。
「目覚めのキスは、?」
………からかっているつもりなんだろうけれど、わたしはずーっとキスしたいのを我慢していたんですからね。
絶対にわたしからはしないだろうと思っているコンラッドの肩を、ベンチに押さえつけて。
こんな風に手や、それどころか言葉すらも使わずに、寝顔ひとつでわたしを縛り付けるコンラッド。
くやしいけれど、それ以上に大好き。
驚いているコンラッドに、噛み付くような、目覚めにはふさわしくないキスを贈った。







狂愛風味に十のお題
1.拘束
配布元


第4回拍手お礼のSSです。
珍しく彼女の方から。
この後逆転されていると思う人、
手を挙げてみてください(はーい)




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