「冬の澄んだ空気だと空が綺麗だねー」
バルコニーで真冬の夜空を見上げたは、白く冷たい息を吐きながら感歎の溜息を漏らした。
「そうか?ここからだと星が遠く感じるばかりだが」
ラインハルトが同意しかねて首を傾げると、宇宙に出たことのないは顔をしかめてラインハルトを軽く蹴る振りをした。
「わたしは宇宙に上がったことがないんだから、そういうときは話を合わせて頷くもんよ。気が利かない男だわ!」
「本当のことを言ったまでだ」
今度は本当にふくらはぎを蹴った。そんなに力は込めていなかったが。
「嫌味男!」
「乱暴女。だが、そんなに羨むほどお前は宇宙が好きだったか?」
行ったことがないのだから好きも嫌いもないはずなのに。
それに、以前はともかく今のはどちらかと言えばあまり宇宙は好きではないはずだ。
ラインハルトたちが戦いに赴く場所でもあるから。
「別に、羨ましいわけじゃないよ。でも物を知らないみたいな言い方されたら腹が立つでしょうが」
「そういうつもりで言ったわけじゃないぞ」
思わぬ印象を与えたらしいことに驚いた。
星の輝きは好きだ。特に宇宙に出てスクリーンに映し出されるあの溺れてしまいそうな圧倒的な数の輝きには今でも魅せられる。
あの輝きを手中に収めたくて、ラインハルトは地上での戦いをも飲み込んで先へと進み続けているのだ。
だが。
「それに、お前も知っているだろう。宇宙空間は星を強く輝かせる代わりに、人間には過ごせない、凍てつく死の場所でもある」
「そりゃ、それくらい知ってるよ」
馬鹿にするなと顔をしかめかけたは、ぎゅっと握り締められた手に驚いて眉を開いた。
「宇宙を焦がれるのは、その冷たい輝きに魅せられるからだ。だが地上では、お前がいるからわざわざ空を見上げる必要を感じないだけなのかもしれない」
「は………?」
「ここではあの冷たい、触れることの決して叶わない光に焦がれる必要がないんだ。側にお前がいれば、俺はいつでも眩しい光を見ることができるから」
真剣にそう言ったのに、は顔を真っ赤に染めて絶句した。








自主的課題
「星も月も凍てついて」
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第7回拍手お礼のSSです。
ときどきラインハルトは素でクサイことを言うイメージが。
不意打ちなだけに効果は絶大です。


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