「やっと来たーっ!心の底から待ってたぞ!本気で愛してるっ!」
フェンスの内側に一歩入ってきた友人に気がついた竜堂終は、両手を振ってアピールしながら大声で叫んだ。



「びっくりした……」
そう呟いたのは告白を受けただけでなく、フットサルで終のチームメイトだった友人たちも含めて計五人。
チームメイトに怪我人が出たということで、小規模な大会で欠員補充を頼まれた終は、しかし補充要員どころか、相も変わらず一番の活躍ぶりを見せた。
次の試合の後までの間のちょっとした休憩時間中、六人で芝生の上に輪になって座る。
中央にはタッパーが三つ。
「俺、竜堂に恋人ができたのかと思った」
「そうだったとしても、この竜堂があんな告白したことで二度びっくりだ」
「俺はに言ったのかと思ったよ」
「まあ、結局はああいうことだったわけだけど……」
チームメイトたちは、いい具合に半分溶けかかった凍らせフルーツをつまようじで刺して次々と口に放り込んでいる終を見て、生温い笑みを浮かべた。
「これでこそ竜堂だ」
「そうだな、竜堂だ」
「まさしく竜堂だな」
「安心したよ、竜堂」
それぞれそんな感慨に耽りながら、からの差し入れのお菓子やフルーツを終に食べ尽くされないように、ちゃっかり手は動いている。
一方、差し入れの冷菓に愛を叫ばれた作り手は、ババロアを掬いながらさすがに呆れたとばかりに溜息をつく。
「菓子に負けた……」
「え!?……お前、竜堂の愛が欲しかったのか!?」
「違う!でも愛はいらなくても友情くらいは欲しいと思わないか!?あの一言を聞いただろう!竜堂の関心は結果にしかないんだ!こいつは食料だけが目的なんだ!」
「……何を今更」
実の兄弟すら保証する、竜堂終の食へのこだわりは悪魔と称されるほどだ。その執着ぶりは今更嘆くことでもないだろうと終のチームメイトたちは顔を見合わせる。
「失礼だなー、お前ら。俺だってに愛はあるよ、アイは」
「え、あるの!?」
驚愕するチームメイトたちと、胡乱な目を向けるに、つまようじをくわえた終は軽く腹を叩いた。
「あるとも。俺の胃袋はを親友だと告げている」
「やっぱり食料じゃないか!」
「へえ、そっかぁ」
四人同時に声を揃えて叫んだが、当の本人だけは納得したように頷いた。
「待て。待て。なんでそこで納得する!?」
「だって竜堂の器官で一番正直そうなのって、脳より胃だろ。胃が告げてるなら間違いないじゃないか」
「だろ?」
諾々と頷いたと、自信満々に頷いた終の二人に背を向けて、チームメイトでクラスメイトの四人は深い深い溜息をついた。




「出会い頭の、第一声」
配布元:capriccio


終の友愛は腹で判断する場合があるようです。
級友たちからすると、彼も終も同じくらい変わり者のようで。
確かに……(^^;)

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